第3回ダウン症候群口腔ケアフォーラム レポートの最終回となります。
最後は、ダウン症のあるお子さんを育てているお母さんでもあり、また管理栄養士でもある大竹先生のお話です。
今 、離乳食に取り組んでいる保護者の方には、より共感できる内容かも!
*引用・転載など固くご遠慮いたしますのでご注意ください。
保護者と管理栄養士の立場から食形態を考える
管理栄養士 大竹 友里恵先生
食形態と好き嫌いの関係
「食べづらい」が好き嫌いの原因になることも!
- 口腔機能
- 感覚の過敏・鈍麻
- 発達の凸凹、ばらつき
- お腹がいっぱい
①口腔機能の課題(噛む力、飲み込みなど)
上手に食べられない経験が重なり「嫌な体験」が増える
お口の機能に合わせた食形態の工夫が必要です
他の先生方も仰っていましたが、発達に合わない食形態だと上手に食べられずに「嫌な体験」や「苦しい体験」などになってしまいます。それが原因で食べられなくなってしまうこともあるのですね。
②感覚の過敏・鈍麻
それぞれ特有の感覚がある。特定の感覚に対するこだわり
食べられるものの把握、傾向をつかみましょう
③発達の凸凹、ばらつき
- 言葉の指示が通りにくい
- 集中して座るのが難しい
- 認知機能(同じ食材でも形が変わると別のものと認識してしまう など)
視覚支援、環境の見直し、子どもの観察などから解決できるかも
④お腹がいっぱい
- 必要エネルギー量が少ない。
- おやつやジュースでお腹がいっぱい。食事時間に何も食べられなくなる。
食事やおやつの時間、内容を見直してみて
大きくなってほしいから、という親の都合(希望?)や、欲しがるからつい、とおやつを多めにしてしまったり…親心としてはアルアル体験かもしれません。
子どもの好き嫌いの仕組み
- 元々の好きな味(旨味・塩味・甘味)、嫌いな味(苦味・酸味)がある
少しずついろいろな味に慣れていきましょう
- 環境や経験と「好き」「嫌い」が結びやすく、食材そのものの好き嫌いとは限らない
周りの大人が好き嫌いを決めつけない
食べ物そのものとは違う理由で「好き」「嫌い」が生まれることってあるんですね。思いもよらない理由が隠れていることもあるかもしれませんね。
- 目に触れる機会がないと食べる機会を失う。
「食わず嫌い」になることもある
目標は最低でも10回目に触れること!
食べなくても気にせず、出し続けることもポイントです。
噛みやすく、飲み込みやすい調理の工夫
- 加熱して柔らかくする
・・・煮物、温野菜、圧力鍋の利用 - 柔らかい食材を選ぶ
・・・肉だったら適度に脂のある部位、魚だったら身の締まりにくいもの - 繊維を断ち切る
- 水分を加える
・・・目玉焼きよりスクランブルエッグ など - 「つなぎ」の利用
・・・ハンバーグなど - 油分を加える
・・・ドレッシング和え、マッシュポテト - とろみの利用
・・・グラタン、カレー、シチューなど - 汁物は具と汁を分ける
おすすめ便利グッズ
離乳食つくりは根気のいる作業ですが、便利調理器具を使ったり、冷凍食品を使うなど工夫することで手間を軽くすることができます。
上手に手を抜く工夫をしてみましょう。
- 圧力鍋で調理時間を短縮したり、食材を柔らかくしたり、ミルサーで食材を細かく刻むなどで手間を省けます
- とろみ剤やゲル化剤を使うことで、飲み込みやすくすることができます
- 市販の冷凍食品や缶詰を使ってみるのもOK
冷凍の唐揚げを使って、水を加えてレンチンするとより柔らかくなるって目からウロコ!
誤嚥しやすい注意が必要な食材
丸呑みを防止するために
- 月齢ではなく、子どもの食べる機能に合わせた食形態にする
- お口の機能以上の食形態にしない
- 食形態を上げることを焦らない
- 調理器具や市販品を上手に使う
- 栄養量、水分量、調理法などは栄養科に相談
- 子どもの「好き」「嫌い」の観察をしてみる
- 専門家にご相談を
まとめ
保護者でもある大竹先生のお話は、ダウン症のある子どもの母だからこそ一般の育児書を見て迷うところ、戸惑う部分が背景にあって、そこから試行錯誤して得た情報と管理栄養士としての情報がミックスされて、まさに実用的なお話でした。
大竹先生は、Instagramなどでも食のこと、お子さんのことを発信されています。
きっと得るものが見つかると思いますよ。
大竹先生のInstagramはこちらからどうぞ。
口腔ケアフォーラムを振り返って
今回の口腔ケアフォーラムのテーマは、今年はじめの事故をきっかけに『誤嚥による不幸な事故を減らすために保護者ができること』を主眼として設定しました。
小松先生のお話にあったように、ダウン症候群は身体的特徴から誤嚥しやすい体質を持っています。
私も長男が年長さんの頃に知り合ったお友達が、知り合ってまもなく保育園での窒息事故で亡くなっています。
「園から連絡が来てすぐに向かったけれど間に合わず…。」というような連絡を頂いた記憶があります。
それは、本当に、あまりにあっけなく、同じ親として掛ける言葉が見つからない経験でした。
だからこそ、少しでもリスクが減るようにするにはどうしたらよいか。
摂食に関係する各方面の先生方にお声掛けすることで、食べるときの環境や、姿勢など一見関係ないように思える部分も影響を及ぼすことを知ることができました。
登壇者の先生方すべてが「ゆっくりでいいので発達にあった食形態を」とおっしゃっていたのが印象的でした。
離乳食は、せっかく手間をかけても食べてもらえないなど、労力の割には成果が見えづらいところもありますよね。
子どもの育ちはそれぞれなので、同じダウン症候群を持っていても発達の度合いはいろいろ。
うまく進まなくて壁にぶち当たったり、お友達が気になって落ち込むこともありますよね。
そんなとき、今回の先生方の多方面からのアプローチ方法を振り返ることで、それぞれのご家庭の突破口を見つけられたら幸いです。