「きょうだい」の気持ち

きょうだい児のいるご家庭に伝えたい「きょうだいの気持ち」ースコトコ医師の講座から

昨年、一般社団法人ヨコハマプロジェクトで開催したブライアン・スコトコ医師の支援者(保護者)向け講座のまとめです。
ご自身も「きょうだい」という立場である先生に、オーストラリアで実施したきょうだい向けアンケートの結果を中心に「きょうだいが障がいのあるきょうだいに何を感じているか、介護者はどう対応するのが良いか」のヒントをお話しいただきました。
当日は、スコトコ先生のほか、長年ソーシャルワーカーをされているスーザン・レヴァイン氏による解説もありました。
日米リアルタイムで開催、同時通訳を経ての内容を私が自分のメモとしてまとめたものです。なるべく正確にお伝えする努力はしていますが、完全とは言えませんことをご了承ください。
また、ここに記した内容を引用、複製・転載することは固くお断りします。

1.ブライアン・スコトコ先生・・・米国マサチューセッツ総合病院 ダウン症候群プログラムディレクター、
ダウン症候群の世界的権威

「きょうだい」の気持ちの例を理解する上で留意しておくべきこと

冒頭、トコトコ医師よりきょうだい向けのアンケート結果の背景について、介護者である親が留意しておくべき点みっつを強調されました。
このブログをお読みになる上でも同様にご留意していただきたいです。

  1. プラス感情もマイナス感情も存在する
  2. たとえ子どもの声であっても介護者が学ぶべき事柄が存在する
  3. それぞれの家庭環境によって差がある
スネイリーママ

解説します。

1.プラス感情もマイナス感情も存在する

定型発達の兄弟間でも その関係性においては、プラス感情もマイナス感情も存在するものである。
従って、アンケートに見られるきょうだいの感情は、必ずしもダウン症のある子どもの「きょうだい」だから、とは限らない部分もあることを念頭に置いておく必要がある。

2.たとえ子どもの声であっても介護者が学ぶべき事柄が存在する

きょうだいの関係は、最も親密で最も長きにわたる関係である。
きょうだいがその環境を選べないだけに、それは小さなラボ(研究室)のように、(保護者や支援者が)学ぶべき事柄が存在する。例えば、共有・社交的スキル・競い合うこと・そして何かを見習うスキルや問題解決など。

3.それぞれの家庭環境によって差がある

きょうだいの気持ちは、それぞれその家族環境によっても差が出てくる。
例えば、家族の大きさ(人数)、生まれた順番、きょうだいとの年齢差、そして性別など。
きょうだいが多いより、2人だけのきょうだいの方が当然兄弟間の密度が濃くなる。

きょうだいに特別な特徴はあるか?

オーストラリアにおける調査の結果では、ダウン症のある子どもが兄弟にいる子どもたち(きょうだい)は、いない子どもたちの兄弟と比べて、他者とそれほど対立しない、思いやりのある子どもの傾向がある
また、ダウン症のある子どものきょうだいであることの統計的なマイナスインパクトは見られなかった。

95%のきょうだいがダウン症のある兄弟のことを好き

アンケートで得られた主な研究結果

  • 12歳以上の95%がダウン症のある兄弟のことを「好き」だと考えている。
  • 9~11歳のきょうだいの87%が、ダウン症のある兄弟のことを誇りに思っている。
  • 9歳から11歳のきょうだいは、ダウン症のある兄弟のことを残念に思っている。
  • 12歳以上のきょうだいの4%がダウン症の兄弟を取り替えられたらいいのにと考えている。

きょうだいからの質問に答える前に注意すべきこと

  • 背景をよく考える
    子どもの質問には、表面的に答えるのではなく、その内側に潜む感情や疑問、背景をよく考えてから答えるようにする。
  • どのような背景で生まれた質問なのか
    質問を受けたとき、周りの人間(保護者・医療関係者等)は、その質問がどのような背景で生まれた質問なのか、よく考える必要がある。
  • 根源的な問題は何か
    質問をしてくるきょうだいが子どもの場合、その根源的な問題をうまく表現できていないことがあることを念頭に置く。

きょうだいが持つ疑問ーその背景とアドバイス

医学的な疑問

ダウン症のある人達の顔はなぜ、ちょっと変わっているの?

先生からのアドバイス:
このような質問が来たとき、回答する前に、なぜ、そのような質問をしたか、なぜそう思うのか、を聞き出すしつつ答える必要がある。

教育上の疑問

私の妹は特別学校に行かなくてはならないですか?

先生からのアドバイス:
この質問には、きょうだいがダウン症のある兄弟に対して、「ゆっくりと基本的なスキルを学ぶため行った方がいいのかもしれない」など、親が考えるような判断を考えていることを示している
この場合、ただ「行く、行かない」ではなく、「きょうだいと同じように両親も考えているよ」ということを伝える必要がある。

ダウン症がある人達がわたしたちとは違う話し方をするのはなぜ?

先生からのアドバイス:
ダウン症のある子どもはしゃべることが不得意なこともあり、きょうだいが「通訳的な役目」を担うことも多い。
きょうだい本人がその役目を好きか嫌いかは別として、ダウン症のある子どもの養護者となっている、ということを示している。

ダウン症のある人達は醜いですか?

先生からのアドバイス:
このような質問が出てくるのは、きょうだいがダウン症のあるきょうだいを恥ずかしく思っているのかもしれない。
その質問が出てきた背景を深く聞いてみる、その意味を考える必要がある
どのような質問にも、「重要ではない」とは考えない事が大事。

家族生活について―アンケートの研究結果から

  • 9歳から11歳のきょうだいの14%がダウン症のあるきょうだいがもっとお手伝いをすべきだと考えている。
    お手伝いについては、親はもっと耳を傾けるべき。
  • 12歳以上のきょうだいの12%がきょうだいと自分に対する両親の注目度が同じではない、と感じている。
    どの子に対しても、同じ時間を持つことが大事。子どもにどうしてほしいか聞いてみる。
  • 12歳以上のきょうだいの88%がダウン症について両親へ尋ねることに気まずさを感じていない。ひいきについてはTIMEの記事を参照しながら説明されていました。

えこひいきはその理由に弁護の余地があれば納得しやすい。
たとえ、最も寛大な(気持ちがある)きょうだいであったとしても健康であるなしに関わらず、ある時点で自分たちが親に関わってもらうのが当然だと感じ始めるだろう。
このような状況についてオープンに語ることが、憤りを抑えるために最善かつ直接的な方法となる。調査によると、扱いに差があったとしても子供たちがその理由を理解したときにはマイナスの影響はないと指摘している。

否定的な気持ちに関する疑問

ダウン症のある弟は人前で大喧嘩をしますか?

先生からのアドバイス:
「わかるよ」ときょうだいに気持ちに寄り添う。

弟はなぜ、あれほどTV映画に執着するのですか?

先生からのアドバイス:
ダウン症のある子どもはTV好きで同じ番組を何度も視聴することがある。きょうだいはそれに次第に苛ついたりする。(筆者注:自分は他の番組が見たいから。)
そういう場合、ダウン症のある子に対して福祉サポートを使うなどして、TVとは別方面からアプローチするという手もある。
また、きょうだいがなぜその疑問を持つか、理由を探る。
きょうだいにとっては、なぜイラつくかなどを話そうとすることによって、コミュニケーションスキルがアップするかもしれない。

弟はなぜ自分のおもちゃではなく、新品のおもちゃばかりを愛するのですか?

先生からのアドバイス:
個人にはパーソナルスペースが必要だけど、ダウン症のある子どもはそこが理解しにくい。
その結果、きょうだいのおもちゃに手を出したりする。
こういった場合は、家庭内でのコミュニケーションが大事になる。

妹には時々、困らされています。

先生からのアドバイス:
このような疑問は、完璧に解決しなくてよい。
なぜそのような疑問が出たかを考える。
また、きょうだいがそう感じることに罪悪感を感じさせないようにする。

社会的生活に関して―アンケート研究結果から

  • 9歳から11歳のきょうだいの61%がきょうだいがからかわれることを心配している。
  • 12歳以上のきょうだいの89%が友人はダウン症のあるきょうだいを快く受け入れていると思っている。
  • 12歳以上のきょうだいの7%が、ダウン症のあるきょうだいを恥ずかしいと思っている。
  • 12歳以上のきょうだいの5%が、社会生活の悪化を感じている。

人生の教訓―アンケート研究結果から

  • 重要なのは、きょうだいにダウン症について早く知らせること。
  • ネガティブな気持ちを吐き出させること。
  • きょうだいたちが経験するかもしれない困難な状況があることを(保護者が)受け入れる。
  • きょうだいが世話をすることの責任を制限する。

きょうだいが責任や重圧を感じさせないようにする。
例えば、すべての子どもが「同じお手伝い」をしなくてもいいけど、ダウン症のある子を過保護にはしない。
彼らのできることで家族に貢献するようにする。


最後に 親としてできること
  • きょうだい向けの支援にアクセスする。
  • 親も十分なサポートを受けることが大事

まとめ

海外のきょうだい児のアンケート結果とその研究のお話でしたが、日本のきょうだいにも通ずる部分があると思いました。
また、思春期の時期はきょうだいがダウン症のある兄弟に対してネガティブな気持ちを持つ、ということもおっしゃっていました。
我が家も同様、次男が長男を疎ましく思い、関わりを避ける時期が3~4年ほど続きましたが、きょうだいとして順当な育ちをしていることがわかり安心しました。


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