ヨコハマプロジェクト&IKKAのメンバーとして携わった勉強会の内容をシェアしますね!
2021年7月11日に第3回ダウン症候群口腔ケアフォーラムが開催されました。
口腔ケアフォーラムは、神奈川歯科大学と一般社団法人ヨコハマプロジェクトの共催で2019年に初めて開催。昨年はコロナウイルス感染症拡大のため休止しましたが、医学界だけでなく一般人(保護者ですね)も含めてのフォーラムとなっているところが特徴です。
今年は一般社団法人IKKAも共催団体として加わりました。IKKAとヨコハマプロジェクト両方に所属する身として当日の講演内容をまとめてみました。
第3回のテーマは、昨年末に起こってしまった不幸な出来事(ダウン症候群を持つ男の子が児童発達支援センターの給食で窒息死)をきっかけに、設定しました。
今回の特徴は歯科学的なアプローチだけでなく、他の分野の先生方―言語聴覚士・作業療法士・管理栄養士のご協力を得たことで多面的なヒントを得られたことです。
日々、子どもと触れる保護者の「摂食に関する悩み」への解決策を複数示せたのではないかと思います。
個人のまとめとなります。転載・引用などは固くご遠慮願います。
~丸呑みで⼤丈夫?~
今からでもできる誤嚥・窒息を防ぐための安全な食生活をするためのダウン症児が取り組むべきポイント
主催: 神奈川歯科大学全身管理歯科学講座障害者歯科学会分野
共催:一般社団法人ヨコハマプロジェクト
一般社団法人IKKA
後援:公益財団法人 日本ダウン症協会、日本ダウン症学会
講師:准教授 小松知子 先生
パネルディスカッション コーディネーター:神奈川歯科大学附属病院 障害者歯科 歯科衛生士 横山滉介
パネラー: 言語聴覚士 高倉 めぐみ (うめだ・あけぼの学園)
作業療法士 加藤 碧 (うめだ・あけぼの学園)
管理栄養士 大竹 友里恵 (フリーランス)
神奈川歯科大学本講演まとめ
ざっくりまとめると、こんな内容です。
- データで知る窒息事故
- ダウン症特有の身体的特徴を理解する
ダウン症候群のある人には誤嚥・窒息に結びつきやすい顎顔面上の特徴や全身的な特徴があります。 - 正しい食べ方を身につけるために必要なこと
具体例を元に振り返ってみましょう。 - 誤嚥防止のためにできること
ご家庭内だけではなく、施設や学校とも連携を! - もし窒息してしまったら
【本講演】ダウン症児の窒息・誤嚥を防ぐために
~食べる機能の生理的メカニズム、窒息しかけた時の対応~
神奈川歯科大学全身管理歯科学講座障害者歯科学会分野 准教授 小松知子 先生
不慮の事故の一位は窒息
全年齢の不慮の事故死に締める窒息死の割合は、近年では交通事故を抜いて第一位 (高齢化も要因―筆者注) の原因となっている。(平成24年厚生労働省@人口動態統計 グラフ)
また、内閣府の別の30歳未満の死亡原因の年齢別データを見ると、1歳未満の子どもの場合は窒息死が8割近くを占めている。
ダウン症のあるお子さんの窒息の事例と原因物質
窒息事例
- 1歳男児:りんご
- 4歳男児:ぶどう
- 5歳男児:ミートボール
- 12歳男児:唐揚げ
- 17歳女子:サイコロステーキ
上記は一例に過ぎないが、ダウン症のあるお子さんの窒息の事例を見ると、1~5歳など低年齢だけでなく12歳や17歳など大きくなってからの事例がある。
子どもの誤嚥の原因物質は主に食物
- 小さのもの…ナッツ
- 丸くてつるっとしたもの…トマトやブドウなど
- パサパサとして唾液を吸収しやすいもの…パンなど
- 弾力のあるもの…団子やこんにゃくゼリーなど
ダウン症児の特徴を理解しましょう
なぜ、ダウン症のある子に窒息が多いのか?
- 発達への不適切な対応が原因で丸呑みになってしまい、その結果窒息が起こると考えられる
- 口の形態や、口腔・全身の機能による影響
- 間違った食べ方=不適切な食具・不安定な姿勢などの人的要因
- 発達に合っていない不適切な食形態
ダウン症のある人の身体的特徴
正しい食生活を身につけるためにダウン症の口の形態や口腔・全身の機能について知っておく必要があります。
顎顔面の特徴
- 顎顔面の特徴ー上顎が狭くて高い・・・ものがたまりやすい
- 噛むときに使う筋力が弱い・・・舌をしっかり動かせない、噛む力が弱い
- 舌が大きく上唇が上がっている・・・舌が外に出やすい、口を閉じて噛むことが苦手、舌を口の中にしまって飲み込みにくい
全身の特徴
- 低緊張
- 知的・身体の発達に遅れがある・・・哺乳反射が遅くまで残っている場合がある、スプーンなど食具を上手に使いこなせない、その結果、一口の量が適切に取れないので詰め込みすぎてしまったりする。
- 鼻呼吸が苦手・・・口に食べ物があるのに息を吸ってしまい、呼吸と嚥下のバランスが難しい
- 心疾患や消化器疾患などの合併症がある
生涯に渡り楽しく安全に食べるために
生涯に渡り楽しく安全に食べるためには乳幼児期での正しい食べ方を身に着けさせ、食べる機能を十分に発達させることが健康寿命の延伸につながってくる。 ゆっくりでもいいので正しい食べ方・機能を獲得させてあげることが重要。
食べ物の形態は適切ですか?
離乳食は、月齢ではなく発達に合わせた食形態にする事が大事です。
月齢を目安に食形態を変えると…
ダウン症の場合は発達がゆっくりなので結果として硬いものを与えてしまうことになる ⇒ 誤嚥を招いてしまいます。
定型発達の場合で2歳半で乳歯列が完成すると言われ、離乳食も完了し大人と同じものが食べられるとされていまる。
しかしそれでも(離乳食が完了していたとしても)成人の噛む力の1/5の力しかなありません。
定型発達の場合で2歳半で乳歯列が完成すると言われ、離乳食も完了し大人と同じものが食べられるとされている。しかしそれでも(離乳食が完了していたとしても)成人の噛む力の1/5の力しかない。
間違った食べ方をしていませんか?
哺乳反射が残っている間は上手に食べ物が食べられません。
そのままごっくんしてしまい、それが丸呑み、窒息につながってしまいます
喋りながら食べると、気管に食べ物が入りやすく誤嚥になってしまいます。
上から食べ物を口に入れると、子どもは上を向いたとき食べ物が気道に入りやすいです。
咳き込んでいる時は何か異物を出そうとしている状態です。
その時に食べると出しきれずに気道の奥に入ってしまう場合がありますよ。
- 離乳食開始はゆっくりと
- 離乳食完了もゆっくりと
- からだやお口の発達に合わせた食形態で
誤嚥防止のためにできること
- 密な情報の共有
- ダウン症候群の嚥下機能の特徴を知り、専門家とつながる
1.密な情報の共有
学校・施設と家庭との密な情報の共有をしましょう ⇒ 学校と家庭での食形態が異なると本人は戸惑い、丸呑み傾向に
- 食事との記はどのような姿勢で食べているのか
- 集中して食べることができるか
- どんな食具を使用しているのか
- どのような堅さの食事をしているのか
2.ダウン症候群の嚥下機能の特徴を知り、専門家とつながる
- 不安があれば専門の医療機関に早めに相談しましょう
- 上手に食べられるように口の使い方の適切な指導を受けましょう(摂食指導)
ダウン症候群では成長しても食物誤嚥による窒息の可能性があることに注意しましょう
窒息を発見したら
喉に詰まったときの除去方は、こちらのサイトが詳しいです。
窒息への対応法を習熟しておくと安心ですね!
参考資料:ダウン症の方を診察している歯科医療機関
ダウン症の方を診察している歯科医療機関
一般社団法人 日本障害者歯科学会ホームページ
- 認定医・専門医のいる施設
http://www.kokuhoken.or.jp/jsdh-hp/html/wp2/?page_id=696 - 口腔保健センター
http://www.kokuhoken.or.jp/jsdh-hp/html/wp2/?page_id=694